気が付けば半年も更新していなかったこちらのエッセイ。

今年はもう少し頑張ろうと思っていた矢先に飛び込んできた悲しいニュース。

ジュンク堂書店が、いや「ジュンクが2月末で閉店する!」

数々の開店・閉店を見てきましたが、このニュースはかなりの衝撃でした。

京都のジュンク堂書店は1988年に開業したので、32年の歴史に幕を閉じるわけですが、とにかく色々な思い出のある書店なので残念でしかたありません。

そこで今回は個人的なジュンク堂との思い出を振り返ろうと思います。

・・・

本好きだった父親に連れられて、初めてジュンク堂を訪れたのは小学生の時でした。それまで街の小さな本屋さんしか知らなかった私は、そのあまりの大きさに衝撃を受けました。どのフロアに行っても本、本、本の山。自分の知らない世界が詰まった本が自分の背よりも高い棚に陳列され、まるで迷路のようにどこまでも続いている。

世界は知らないことで溢れている…

そう言わんばかりの書物の数に圧倒されつつ、少し背伸びしたくなったのか普段は漫画しか買わないのに、小説を買ってもらって帰路につきました。

それから幾度となく利用することになるジュンク堂ですが、年齢を重ねるにつれ読む本の内容も変わっていきます。大学生になった時、遊びに行くついでに立ち寄った際、偶然立ち読みした本があったのですが、発行していたのが京都の出版社なのを知って妙に頭に残りました。

やがて時は経ち、私は大学を卒業してこの出版社に就職することになります。

今にして思えば、もしかするとこの時の立ち読みがきっかけだったのかもしれません。

そして入社したばかりの時に、このジュンク堂で本の店頭販売するという仕事がありました。今までずっと買う立場だったのが、売る側に変わった瞬間です。当時ペーペーの中のぺーぺーだった私は本づくりに一切関わっていませんでしたが、通りがかった方々が自社の本を手に取って買っていく姿をみて、「この街がもっと盛り上がるような情報や記事を早く書けるようになって届けたい」と高揚感が高まったのを今でもはっきりと覚えています。

それから十数年後、とある雑誌の編集長に抜擢されこの思いが叶う日がやってきます。しかも苦労して作り上げた本がジュンク堂のサイトで週間ベストセラーとして掲載されているではありませんか!

どんな人が買ってくれているのか気になり居ても立っても居られなくなり、猛ダッシュでジュンク堂へ行き、自分の作った本が陳列されている棚の近くで張り込みました。立ち読みしている人の様子を伺い、買ってくれた方全員にハグしたい気持ちと、買わなかった人にどこがダメだったのか聞きたいという気持ちの繰り返し。私が書店内で一喜一憂している姿は、おそらく傍からは変質者にしか見えなかったでしょう。今となっては良き思い出です。

今は紙媒体の世界を離れWEBマガジンの編集をしていますが、今でも定期的にジュンク堂に立ち寄り、未知なる本との出合いを楽しんでいます。

ネットショップでは決して味わえない高揚感。欲しい本を買う本屋というより、欲しくなる本を教えてくれる本屋でした。

閉店まであと少し、いろんな思い出が詰まったジュンク堂に時間が許す限り立ち寄りたいと思います。

それにしても時代の流れとはいえ、街から本屋さんが姿を消すのはやはり残念ですね。今まで「ジュンク堂=富小路通り」だった脳内地図は当分上書きできそうにありません。

おわり。

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